先生は、車のエンジンをかけながら、あごと肩の間に携帯電話を挟み、お母さんに電話をかけた。




「大丈夫ですか?救急車は来ましたか?今、お父さんの主治医の方に電話して聞きました。手がしびれたり、体に異常があれば、大変ですが、今のところ大丈夫だろうとのことです。とにかく、救急車で病院へ行って、調べてもらいましょう。」



私は何も出来なかった。



ただ不安で押しつぶされそうな胸を、

どうやって落ち着かせればいいのか考えていた。




先生は、教師の顔をしていた。




なんだか手の届かない偉い人のように見えた。





頼りになる先生に…


「ありがとう」しか言えなかった。