「着きましたよ。こちらがお部屋になります」

「あ、はい」

案内された部屋に入ると、新しい畳のいい香りがした。

窓の外は緑が一面に広がっていて空気が美味しそうだ。


「では、ごゆっくりして下さいね。さっ、行きますよ」

女将はお辞儀をすると、少年の手を引いて部屋を出ようとした。


「ばぁちゃん待って!お兄ちゃん、またお話しよ!」

「おう」

「お兄ちゃん名前は?オレ拓磨!」

「拓磨か…俺は春人。」

「春人…、春人にぃちゃんか!また遊びに来るね!じゃ!」

「おう」


拓磨はまったくもう…と女将に少し怒られながら部屋を出て行った。


一瞬、顔を曇らせたのが気になったが、春人はまた拓磨に会いたいと思った。


子供の心はすごく純粋でいい刺激になる。


部屋で少しお茶を飲んでから、さっそくカメラを持って出かけることにした。


宿を出て少し歩くと、川が流れているのを見つけた。


流れは緩やかで、太陽の光が降りそそいでキラキラしている。


天気が良く、川遊びをしている子供たちもいた。


春人は川の方におりて行き、子供たちに写真を撮らせてもらえないか頼んだ。


子供たちは嬉しそうにポーズをとった。


自然と戯れるピュアな子供の姿は、春人が撮りたいと思っていた温かい写真そのものだった。