予約していた宿に着くと、優しそうな女将が出迎えてくれた。


少し離れた柱のすみから幼い少年が覗いている。


「では、お部屋にご案内致します」

チェックインを済ませて、女将と一緒にエレベーターに乗ろうとすると、物凄い勢いで少年が走ってきた。


「ばぁちゃん!!オレも乗る!!」

「こらこら、いけませんよ。お客様いらっしゃるんだから、大人しくしてないと…」

女将は春人に申し訳なさそうにお辞儀した。


「僕はかまいませんよ」

「ですが…」

「さぁ、一緒に乗ろう。おいで!」

そう言うと少年は嬉しそうにエレベーターに乗った。


「申し訳ございません…ありがとうございます。」

下を見ると、少年が春人の方を見上げてニッと笑っている。


「なぁなぁ!お兄ちゃん、そのカメラ本物?」

少年は春人が首にかけている一眼レフを指さして言った。


「あ、ああ…本物だよ。カメラ好きなのか?」

「うん!大きくなったらカメラマンになりたい!お兄ちゃんはカメラマン?」

「いや…お兄ちゃんは写真を撮るのが好きなんだ。」

「そっか!同じだね!」

「そうだな!」

夢見る子供はキラキラしていて眩しい。
ただ趣味として写真を撮ってきたが、カメラマンになりたいとなぜか思ってしまった瞬間であった。