それから数日、春人は部屋に閉じこもっていた。


気がつくと、旅館を予約していた期間が間もなく終わろうとしていた…。


コンコン。
「春…人…?」


「拓磨か…」


「春人…急に来てごめん…心配だったんだ」


拓磨の言葉に春人は涙が溢れた。


「悪いっ…俺っ、カッコ悪いよな…くっ…」


「悲しい時は涙が出るに決まってるよ…」


「拓磨…お前…ホントに大人だな…」


「かっこいいオオカミになれるかな?」


拓磨の言葉に、今度は吹き出した。


「お前……、やっぱりまだ子供か…はは…」


少し笑うと、春人の顔はすぐ真剣な顔に戻る。


「拓磨…ありがとうな…」


「春人…?」


「なんか…ここに来て…拓磨に出会って、いろんなことを得ることができた」


「オレ…何もしてないのに…」


「いや、お前に会えて良かった…ありがとうな」


春人は拓磨の頭をポンポンと叩いた。


「なんで…そんな寂しい顔すんだよ」


「だって、春人…もうすぐ帰るんだろ?」


そう言ったとたん、拓磨は大粒の涙を流した。


「ああ、明日…帰るよ…」


「うっ…うっ…」


春人はしゃがんで拓磨の肩に手を置いた。


「拓磨…俺達は親友だ。また、絶対に会えるよ。なっ!」


「うん…当たり前だ!!」


拓磨は拳を握って、精一杯の笑顔を見せた。