久しぶりにカラっと晴れた日。
春人は旅館で自転車を借りて、海までやってきていた。
砂浜には白い貝殻がちらほらと落ちている。
「拓磨も連れてくればよかったな…」
春人は一人で呟くと、写真を一枚撮った。
夏だというのに、人は少なくて落ち着いた海だった。
そんな空気に癒されながら、春人は写真を撮り続けた。
「春人ー!!!」
空が夕焼けに包まれた頃、拓磨が自転車で勢いよく走ってきた。
「おい、拓磨!危ないだろ、ゆっくり走れよ…」
「そんなこと言ってる場合じゃないよ!!春人の大事な人が…」
「え…っ、真奈美さんか?!真奈美さんに何かあったのか?!」
「は、早く…!」
春人は胸騒ぎでどうにかなりそうなのを必死で抑えた。
旅館の近くまで来ると、近所の人たちと警察が集まっているのが見えた。
「女将さん!いったい何が!!」
「春人くん…これ…遺書が…」
「えっ…遺書…?」