矢田くんの足音が消えていく 私は追いかけることも出来ず、黙って鞄を手に取った 「いいの?」 「うん、いいよ」 友達の声に平気なふりして答える 平気、平気だよ そう思わないと泣き出しそうだった 傍に居たい ただそれだけなのに それだけなのに言えなかった 苦しくて苦しくて 泣いてしまいそうなくらい苦しい だけど 言葉に出来なくて… 私は想いを伝える術を忘れてしまっていた