結婚後、わかっていたはずなのに、落ち着かない夜が続く。

タクミは1年のほとんどを海外で過ごす人。

付き合ってる時は、それが逆に心地よかった。

なのに、結婚した途端、そんな気持ちはどこかへ行ってしまった。

一人でいることの違和感。

不安感。

居心地の悪さ。

結婚=二人でいること。

それが守られないでいることの不自然さに、自分でも驚くほど不満を抱いた。


こんなにも、結婚してからの自分って変るものなの?


ハルキとの一件があったことも、そんな気持ちに拍車をかけているんだと思う。

ハルキの体温を自分の体から早く消し去りたくて、タクミに抱き締めてもらいたかった。

なのに、いつもタクミはいない。

一人でいる夜は、想像以上に私を苦しめる。

ふとした瞬間に、ハルキの眼差し、柔らかい唇、温かい胸板がよみがえる。

私の中心から、何度ハルキを求める腕が出そうになっただろう。


家の電話が鳴るたび、思わず緊張した。

ひょっとしたら・・・って思うから。

結局、ハルキには自分の携帯番号は知らせてなかったから。