その人は、少しだけ窓を開けてエンジンを切った。

そして、座席を倒して寝転がる。

私も同じように座席を倒した。

静かな森。

コオロギの鳴声が、窓の隙間から流れてくる。

目をつむった。

心地よい空間の中で、不思議と眠気はない。

その人は、私の右手をそっと握った。

「なんだか不思議な気分だね。俺たち二人だけがこの地球に存在してるみたいだ。」

私は少し笑った。

「どうする?」

その人は、わかってるくせに、いつもわざわざ私に聞いてくる。

「どうするって?」

敢えて聞き返した。

「今から。もう少しこうしていたい?」

「キスでもしとく?」

その人は暗闇の向こうで笑った。

「しとく。」

その人の大きな体が私の上に覆い被さった。

温かい腕が私を抱き締める。


何度も優しいキスをした。