「まぁまぁ、いいじゃない。ここはハルキくんのお言葉に甘えて注文だけしとかない?その方が来てからすぐに乾杯できるじゃん。」

慌てて間に入った。

妙に気を遣う。こんな疲れる食事って嫌だな。

「ミクがそう言うんなら。」

タクミはしぶしぶワインリストを手にした。

海外に飛びまくってるタクミの選ぶワインの味は確かだった。

だから、お任せ。

「赤と白どっちがいい?」

タクミが私に聞いてきた。

「ロゼ。」

私はメニューに目を落としながら答えた。

ハルキがくすっと笑うのが聞こえた。

「ミクって、本当に、なんていうかなぁ。」

タクミも笑った。

「ロゼって今一つなんだけどな。まぁいっか。お酒が苦手な人には飲みやすいし。」

タクミはしばらく吟味した後、ウェイターを呼んだ。

そのすぐ後、私の真横を柔らかく甘い香りが通り過ぎた。

顔を上げると、丸顔のかわいらしい女性が立っていて、私と目が合うとぺこりと頭を下げた。


色がものすごく白くて、清楚な雰囲気の中に知的なおでこと瞳の印象的な女性だった。

彼女がミズキちゃん?

ハルキはその女性の横に立つと、

「こちらが兄貴のフィアンセのミクさん。そして、これがミズキです。」

ミズキちゃんは少し頬を染めて笑った。

「今日は遅れてすみません。ミズキです。今日はお招きありがとうございます。」

年齢のわりにとてもきちんと挨拶のできる、明らかに私とは違う印象のいい子だった。

私とタクミも慌てて立ち上がって会釈をする。

「ミズキちゃん、久しぶりだね。いやー、ますます綺麗になってびっくりしちゃったよ。」

タクミは頭をポリポリと掻いた。


私も若く見える方だけど、やっぱりこの肌の張りはいくらお化粧しても叶わない。

急に自分自身が恥ずかしくなった。