お店はいかにもタクミが選びそうなおしゃれなフレンチレストランだった。

さすがにイタリアから帰ってばかりだから、イタリアンにはしなかったんだ。

私はどっちかっていうとイタリアンの方が好きなんだけどね。

座席は、一番奥の窓側。

落ち着く場所。

とりあえず、私とタクミは並んで座った。

ハルキはタクミの前。


ウェイターが、テーブルにお水を持ってきた。

ミズキちゃんが来るまでにメニューを見せてもらう。

顔を上げると、ハルキと目があった。

な、何見てんのよ。

「ミクさんは、こんなおしゃれなお店お好きなんですか?」

知ってるくせに。

私はもっと泥臭い感じの居酒屋が好きだってこと。

「うん、まぁね。お酒が飲めたらどこでも。」

私はハルキから目をそらして言った。

ハルキは軽く笑った。

「ミクさんらしいや。」

タクミはその一言に少し反応した。

ハルキを一瞥しただけだったけど、明らかに不信な表情だった。

思わず話題を振る。

「ミズキちゃんはもうすぐ来れそう?」

「あ、さっきメールがあって、あと5分ほどで到着するって。」

「そう。」

「だから、先にワインでも頼んでおきましょうよ。な、兄貴。」

タクミは怪訝な顔でハルキを見た。

「あと5分だったら待っておいてやったら?別にワインなんて急ぐことはないだろ。」

「いや、ミズキはそんな飲まないし。兄貴とミクさん飲むんだったら好きなの選んでおけばいいのにって思っただけ。」

明らかに二人の間に緊張が走っていた。