打ち合わせの間も、ハルキはずっと黙っていた。

ハルキらしくもない。

でも、もし、ハルキと私がそういう関係じゃなかったとしたら、それが当たり前の態度なのかもしれない。

あまりに素っ気ないハルキの態度に、時々イライラしている自分がいた。


そして全ての打ち合わせが完了。

タクミは助手席に座ると時計を見てハルキに向かって言った。

「そろそろ店に向かうか?まだミズキちゃんが来るまでには時間あるけど。」

「ああ、そうだね。じゃ、直行するね。」
 

『ミズキちゃん』という響きを耳にした途端、急に心臓がドキドキしてきた。

なんだか胸が苦しくなるような、そんな鼓動。

このままじっとしていたら平静でいられそうもない。

本当はこんなこと聞きたくもないのに、私の口は勝手に開いていた。

「ミズキちゃんってどんな人?」

タクミは、私の方を振り返って笑った。

「ものすごく美人。」

ハルキは横で苦笑している。

「ハルキと同じ年なんだけどさ。なんていうか洗練された女性だよ。俺がミクと出会う前でハルキの彼女じゃなかったら、即効好きになってそうなタイプ。」

タクミは笑ったけど、ハルキも私も笑えなかった。

ハルキは普通に言った。

「そうなんだ。ミズキって兄貴の好み?俺はミクさんタイプなんだけどな。なんなら一度交代してみる?」

タクミは一瞬たじろいだ。

「そんな怒らなくったっていいだろ。ごめんよ。冗談だって。いや、それくらい魅力的な女性だよっていうことをミクに伝えたかっただけなんだ。」

タクミはそう言うと、私の方を向いて舌をペロっと出した。