「さぁ、そんな話は置いておいて、出発しまぁす。」

ハルキはタクミの腕を振り払うと、エンジンをかけた。


そうだよね。

だって、ハルキには結婚を考えてる彼女がいるんだもん。

それは、全く間違ってない反応。

私とハルキの関係がおかしいだけ。


「あ、そうだミク。」

タクミの声が私を現実に引き戻す。

「今日の打ち合わせの後、ハルキの彼女のミズキちゃんも誘って一緒に食事でもどうかなって言ってるんだけどどう?」

どう?って。

バックミラー越しにハルキの顔を見る。

ハルキは無表情で、私の方は少しも見てくれなかった。

「ハルキくんは、この後デートなんだ。」

ハルキと目が合わせたくて言ってみる。

ハルキの目が少しだけ笑った。

「まぁ、別にどっちでもよかったんだけど、兄貴がせっかくだからってさ。」

「そうなんだ。」

タクミは私の方を振り向いた。

「今日はハルキを借りちゃってせっかくのデートに水を差しちゃったからさ。おわびに食事でもご馳走してやろうと思って。」

「いいんじゃない。」

普通に言ったつもりだったのに、車内には妙に冷ややかな声となって響いた。

ハルキは一瞬私の顔をちらっと見た。