「な、なに・・・?」

思い切り、意表をつかれ、後ずさりする。

「今日は兄貴のつきそい。」

「は?」

「実はさ、兄貴の奴、昨晩階段から足踏み外しちゃってさ。ただ今捻挫中で運転厳禁状態なんだ。」

「そうなの?」

「そ。だらか、俺は助っ人ってわけ。ばれないようにうまくやるから心配しないで。」

ばれないようにって・・・。

既に私の心臓は口から飛び出しそうなほど、バクバクしていた。

こんなことってある?

どうして、フィアンセと大事な打ち合わせの日に、不実な関係を結んでしまった相手と同席しなきゃなんないの?

思わず頭がくらっとする。

倒れそうになった私の肩を、ハルキはさっと支えてくれた。

「ごめん。」

ハルキは、うつむきながらつぶやいた。

どうしてあやまるわけ?

よくわからない。

「今日は一段ときれいだよ。」

ハルキは私の耳元でささやいた。

その少し低音の声が私の耳から全身にひろがる。

それだけで、体中の細胞が沸き立つような感覚だった。