カンナの後ろ姿を見えなくなるまで見送った。

ふぅ。

短いため息を一つつく。

ああいう純粋に幸せな人を目の前にすると、自分が情けなくなってくる。

確かに好きになったら一直線タイプだったけど。

私は今はタクミが好き。

そして、ハルキは、タクミの弟で、一夜限りの相手。

ハルキのことは、嫌いじゃない。

好きだけど、タクミとは違う好き。

ん?

違う好きって一体何?


こめかみがキュッと痛んだ。

やめよう。

こういうこと考えるの。

私は今気晴らしに外に出てるわけなんだから。

気晴らしの時間は気晴らししないと、その後がもたない。

一夜限りの相手のことは、あくまでも一夜の関係。

だから、今はなかったに等しいんだから。

そう割り切ることが、一番大切。


両手で自分の頬をパンと叩いた。

そして、そのまま行きつけの本屋に向かった。