「ま、それは冗談だけど、来月の結婚式、楽しみにしてるわよー。」

カンナは明るく私の肩を叩いた。

私は無表情でうなずいた。

「カンナは今からお出かけ?」

「うーん、ちょっとね。デートみたいなもんかな。」

そう言いながら、頬がそまったカンナはとてもかわいかった。

「えー。彼氏出来たんだぁ。初耳だよ。どんな人?」

私はカンナの横腹をつついた。

「普通、本当に普通の人。職場の先輩なんだ。」

「そう、よかったじゃん。2年前、彼氏と別れてから全く男っ気なかったから心配してたんだ。」

「そうだよね。あの時は本気で落ち込んで、もう誰とも付き合わない!なんて断言してたもんね。」

「そんな断言も覆されるような、素敵な男性と出会ったってわけだ。」

「そういうことにしときましょうか。」

カンナはくすぐったそうに笑った。

なんだか、そんなカンナがうらやましかった。

カンナは腕時計を見た。

「あ、ごめん、ミク。もっと話してたいんだけど、待ち合わせの時間ぎりぎりだわー。また今度ゆっくり電話する。」

「うん、こっちこそごめんね。引き留めちゃって。彼氏によろしくぅ。」

私は肘でカンナの腕をこづいた。

「あはは、うん。じゃ、またね。ミクも今忙しいだろうけど体に気をつけて。来月、素敵な花嫁ミクに会えるの楽しみにしてるからぁ。」

カンナは明るく笑うと、手を振って人混みの中に駆けていった。