そうこうしている間にお店についた。

ガラガラと引き戸を開ける。

まだ時間が早いせいか、お客はまばらだった。

「おっ。今日は早いね。いらっしゃい。いいお酒入ってるよ。」

カウンターから、威勢のいい声で丸顔の店主が声をかけてくれた。

ハルキが小さな声で言った。

「ほんと、行きつけの店なんだ。それにしても、おっちゃんばっかだけど。」

「しっ。声が大きいって。」

確かに、若者が来るようなお店ではない。

場所だって、電車の高架下だし。

電車が通るたびにガタガタと天井で音がする。

でも、こういうのが、私はたまらなく落ち着くんだよね。


タクミと初めて来た時、タクミは終始落ち着かない感じだったけどハルキはどうかな?


一番奥のカウンターに並んで座った。

「はい、これ突き出しね。」

店主が酢でしめた魚とキュウリの和え物が入った小皿を目の前に置いた。

「とりあえず、生中お願い。ハルキくんもそれでいい?」

「はい。」

店主は片手を上げて「あいよ。」と笑って答えた。

すぐに持ってきてくれた生中でハルキと乾杯。

そして、突き出しを口に入れる。

「うわ、うめ!」

ハルキが声を上げた。