私は、もっとタクミにののしってもらいたかった。

怒りで殴られる覚悟もできていた。

だって、それくらいのことを私はしていたんだもの。


タクミは、続けたわ。

「ミクは一人で寂しかったんだね。きっと、ミク自身が気づいてなかっただけで、付き合ってるときからずっと。」


なんだかわからないけど、そんな風に言われたとたん、涙があふれて止まらなくなった。

タクミには、いつだって「一人でも平気」「一人の時間も必要」って言い続けていた私が、そんなことを言われてどうして泣いてしまったか。

ハルキには話したことなかったけど、私には両親にきちんと愛された記憶がないの。

私が幼い頃に、両親は離婚。

そして、母親にひきとられて育てられた。

母親は、必死になって働いていたから、二人で過ごす時間なんて、一日のどれほどあっただろう。

きっと母親は私への配慮を精一杯してくれていたんだろうけど、幼い私にはそんなことわからなかった。

時々酔っ払って、お酒臭い母親の姿を見てたら、私は自然と強くなろうって心に誓っていた。


母親がたまに外泊してきたり、時々若い男を連れ込んでいたりしたけど、見て見ぬふりができるようになっていた。

どんなことがあっても動じない。

動じないでいられる自分を作ることができるようになっていたの。

それは、自分であって、本当の自分ではなかった。


そのうち、本当の自分がどんな自分なのかすらわからなくなっていった。