「その後、体調はどう?お腹の赤ちゃんは順調?」

なるべくたわいもない話をふる。

「はい、順調です。私のふさぎ込んだ気持ちを励ましてくれるほどに、お腹の子は元気で。唯一の救いかもしれません。」

「そう。」

私は静かに紅茶を飲んだ。

「あの・・・ハルキの件でお電話したときに話したこと、覚えていらっしゃいますか?」

ミズキちゃんは思い詰めたような瞳で私を見つめた。

「え、何だったっけ。」

わざと忘れたふりをした。

「ハルキにお腹の子がハルキの子じゃないって嘘をついてたっていう話です。」

「ああ。そんなこと言ってたわね。」

「私、ずっとハルキにもてあそばれてるって思っていて。ハルキの気持ちを確かめるためについた、嘘でした。ひどいすぎる嘘です・・・よね。」

私は軽くため息をついた。

「そんなことないんじゃない。ハルキくんほど人気のあるタイプと付き合ってたら、彼女の立場としては心中穏やかではないでしょ。本当は軽くついた嘘だったんでしょ?」

ミズキちゃんの大きな瞳に涙があふれた。

「ミクさん・・・ミクさんにそんな風に言ってもらったら・・・私、どうしたらいいのか。」

私は膝の上でぎゅっと握り拳を作った。

「っていうか、あなたは正直に何度もハルキくんに話そうとしてたんでしょ?そして、ハルキくんはその嘘を知ってか知らずか、いずれにせよ、生涯の伴侶としてミズキちゃんを選んだ。その事実は変らないわ。」

ミズキちゃんは私の前で「わぁ」っと泣いた。

本当は私が泣きたかった。


私の愛していたハルキはね。

ミズキちゃん、あなたのことを一番に愛していたのよ。

それだけは、消せない事実。

私との関係は、あなたとの関係があってこそ成立していたもの。