どれくらいの時間がたったんだろう。

私は、全ての感情、全ての思考が、停止していた。

人ではなくモノになるほどに、私の中はからっぽで。

私自身を喪失していた。

悲しみとか、後悔の念とか、そういうたぐいのものも全て自分から消え失せている。

もちろん、涙なんて。


ただ、受話器を置いたまま、その場に座り込んでじっとしていた。

色んな物音が耳の遠くの方でしていたけれど、それすらも私にとってはとても無意味で、ただの物質的な存在でしかなかった。

寒いのか、暑いのか。

乾燥しているのか、湿気が多いのか。

感覚自体が、その時の私には存在していなかった。


何も考えたくない。


何が起ったのか。


わからない。


一つ言えることは、喪失。

全ての喪失。