夫婦。

自分の真ん中の方が痛くなる。

その言葉の重みに、責任を伴う関係に。

「夫婦って、一体何なんだろうね。」

ハルキは静かに言った。

「そうね。私もよくわかんない。」

「恋人の方が気楽でいいんじゃないかって思ったりさ。フランスじゃ、ほとんど籍入れないで同棲してるカップル多いらしいよ。俺、フランス行こうかな。」

「あはは、くだらない。」

「一緒にフランス行かない?」




少し低音の、優しいハルキの声が耳の奧でこだます。


一緒に、フランス。


私の胸が少女のようなときめきを秘めつつ、高鳴った。


ばか。


何言ってんの。


そんな返答をすべきなのに、言葉が口から出てこない。


きっと、これもハルキの意地悪な冗談。


それが冗談だって事実を受けとめることすら怖かった。



「考えとく。」



思わず、口をついて出てきた言葉。


顔がカーッと熱くなる。