「はい。」

「俺。ごめん、寝てた?」

その声はハルキだった。

電話なんて、会う直前くらいにしかかけてこないハルキなのに。

今日は一体どういう風の吹き回しかしら?

「どうしたの?」

「あ、さっきメール送っただろ?返信がないから、ふと気になってさ。」

「あー、それで。電話なんて珍しいからびっくりしちゃった。」

「いや、今日は色々と思うことがあったしさ。俺の送ったメールで何か気に障ったんじゃないかって心配になって。」

「ばかね。大丈夫よ。それより、もう家に着いたの?」

「いや、まだ帰り道。少し眠気が襲ってきたから、ファミレスでコーヒー飲んだとこ。」

「そっか。気をつけて帰らなくちゃだめよ。」

「はいはい。」

ハルキは嬉しそうに笑った。

「兄貴は今度いつ帰るの?」

ハルキに聞こえないように小さくため息をついて、カレンダーに目をやる。

「えーっと。三日後かな。」

「そ。それまでしばらく寂しい夜だね。」

ハルキは意味深なトーンで言った。

「別に。慣れてるから。ミズキちゃんはいつ帰ってくるんだっけ?」

「明日の夕方。」

「ちゃんと話なさいよ。逃げちゃだめよ。あなた達はどうあがいても今は夫婦なんだから。」

ハルキはため息をついた。

「夫婦、ねぇ。」