「でも、ハルキはミズキちゃんのお腹の子の父親が誰だか知りたくない?」

少し唇が離れた時に聞いてみた。

「知ってどうするの?きっと知らなきゃよかったって思うにきまってる。」

「どうして?」

「相手の面を拝んでまで、お腹の子の親になれるほど、俺心広くないから。」

ハルキは自分の唇を私の首筋に押し当てた。

「じゃ、ハルキは永遠にその秘密を明かさないまま父親として振る舞うわけ?」

「ま、そうだな。」

「苦しくない?」

「苦しいよ。すぐにでも逃げ出したい。こないだのお披露目会の時、決意を新たにするはずだったのに、結局できなかった。」

「だめじゃない。」

私は私の首筋にうずめているハルキの顔を両手で挟んだ。

「そんな気持ちのまま、ミズキちゃんと一緒にいられるわけがない。」

「どうすればいいのさ。」

ハルキは少しすねたような表情で口をとがらせた。

「きちんと、今の気持ちをミズキちゃんに伝えて。」

「そんな格好の悪いことできるかよ。」

ハルキは私の両手を掴んで、自分の顔から引き離した。

男って、くだらないところでプライドが頭を持ち上げる生き物。