「でさ、あいつ真面目だろ?どんな相手であっても、一旦お腹に宿してしまったら自分の責任でもって生んで育てるって言ったんだ。そんな甘い人生なんてあるわけないのに。そこが、結局世間知らずなお嬢様ってか。」

ハルキは深くタバコを吸った。

「だから、俺言ったんだ。『じゃ、俺と結婚して、お腹の子を育てよう』って。」

「その方が甘く考えた発言だわ。」

私はあきれて、長いため息をついた。

バカじゃない?

思いつきな発言にもほどがある。

そんな大事なこと、瞬時に決めてしまうことじゃない。

もちろんミズキちゃんも。

「ミクが言う通りさ。甘いよね。もう、甘甘。言った直後から後悔の嵐だよ。これまた情けないんだけど。」

「最低だわ。」

思わず口からこぼれる。

「そうだよね。ほんと、最低。でも、やっぱほっとけなかったんだ。ミズキのこと。」

「それは、愛?」

「さあ。わかんない。」

「愛よ。きっと。」

そう言いながら、なぜだか自分の気持ちの奥がにぶく痛んだ。

聞きたくなかった。

「そんな話をした後、俺、兄貴のことづけをミクに伝えに行ったんだ。」

「え?あのドレスを決めにいった日のことだったの?」

「そう。」

そうだったんだ。

でも、それなら、どうして私に?!