「うそでしょ。」

私は少し体を起した。

「嘘だと思う?」

ハルキは私の方を見ずに、口から白い煙を吐き出した。

「だって、ハルキ以外の子どもを妊娠するなんて、考えられないもの。」

ハルキはうつむいて、少し笑った。

「考えられないことって、案外身近に起こり得るもんなんだぜ。」

「た、例えば?」

「ミクと俺の関係だって、兄貴にとっちゃ考えられないことだろ?だけど現に起ってる。」

私はただ黙ってうつむくしかなかった。

「俺は、ミズキの妊娠を知らされたとき、何を思ったと思う?」

「そりゃ、嬉しいでしょ?恋人が自分の子を妊娠したなんて真実を知ったら。」

「俺は、正直ショックだった。」

「ショック?」

「そりゃ、このままミズキとずっと繋がっていれば結婚もあり得るなって思ってたけど、結婚したいってタイミングってもんがあるじゃない?その時はまだそのタイミングじゃなかったんだ。」

ハルキはガラス窓の向こうの一点を見つめていた。

「だけど、俺の子じゃないって、すぐに言われてさ。これまたホッとしてる自分がいたわけ。情けないんだけど。」

ハルキの気持ちは、彼女にしてみたら、非道極まりないのかもしれないけど、普通に感じる感覚なのかもしれない。

「でも、ハルキの子じゃなかったら一体誰の?ミズキちゃんって真面目そうなタイプなのに、ハルキ以外の人とどうこうなるなんて。」

「そ。俺も信じられなかったよ。でも、相手が誰なのかは、結局俺も知らないんだ。」

「え?どうして?」

「俺の知らない奴だって。俺があまりにいい加減だから、少し愛想尽かしていたところにふと現れた野郎らしいよ。魔が差したってか、そういう感じで関係もっちゃったらしい。」

ミズキちゃんが??