「結婚しよう。」

そう言われたのは1年前の夏だった。

仕事がら、ほとんどを海外で過ごす本山タクミ。

もともと自分の時間を大切に過ごすことが好きだった私にとって、タクミは丁度いい間隔をおいて会える、居心地のいい相手だった。

その当時、タクミは30歳。

私は28歳。

結婚適齢期としても、問題なかった。

何も断る理由はない。

恋愛感情?

結婚なんかにそういう感情はいらないと思ってたし。

ときめく相手とは結婚してもうまくいかない、って誰かが言ってた。

『居心地がいい』

それが一番の決めてだった。