さくら。

ざわざわ

今日もこの騒がしい教室からすべてがスタートする。
男の子の大声。女の子の笑い声。
…いつもと何も変わらない、いつもの朝。

そう、思ってた。


「千尋！おはよう！」

「花菜ちゃん！おはよう！」


私に挨拶をしてくれたのは、親友の花菜ちゃん。
弱くてうじうじした私をいつも守ってくれる、大好きな私の友達。


「ねえねえ聞いた？今日このクラスに転校生が来るんだって!!」

「そうなんだ！どんな人だろうね？」

「いくらかっこいい男でも、千尋は渡さないし!!」

「あ、あはは…」


こんな言い方でも、私を大切にしてくれるのが分かる。
花菜ちゃんはとってもいい人。


そんなやり取りをしていたら、がらっと古臭い教室のドアが開けられた。
音がしたところを見た途端、みんなはわたわたと席に着き始めた。


「おら、席着けー。」


そう、ドアを開けたのはこのクラスの担任。
…と、誰か知らない男の子？




「みんなお待ちかねの転校生だ。男子は女子じゃなくて残念だったなこのヤロー。」


なんてことを言い出すから、転校生の男の子はちょっと苦笑いしているように見えた。


「じゃあ浅香、自己紹介を。」

「あ、はい。」


初めて聞いた声は高くもなく低くもなく、


…何だか吸い込まれる様な声だった。


周りを見てみるとうっとりしているのは自分だけだった。
(私の耳がおかしいのかなあ…)


「浅香沙久良です。」


さくら…。

今、確かにさくらって…言った？


「じゃあ浅香、お前の席はあそこだから。」


そう言った担任は確かに私の隣を指さしていた。


「え、どこですか？」

「あいつの隣。おい桜！」

自分の苗字を呼ばれて、身体が跳ね上がったのが分かった。