「好きだから、付き合って…結婚して、妊娠する
普通だろ?」

「『好き』って、須山…高校卒業してからどっか頭でも打ったか?」

「打ってねえよ」

木下が心配そうな顔で、俺の頭を触ろうとする

俺は木下の手を振り払うと、ワックスで固めてある髪を少しいじった

「お前の口から、『好き』って言葉が出るなんて…頭打った以外に考えられねえって」

他の奴らも木下の言葉にうなずいた

「あ、煙草フカす?」

ナツが鞄から愛用の煙草を出してくると俺に一本出してきた

「俺、止めたから」

煙草を受け取らずに、俺は首を振った

「え? もしかして奥さんのため?」

ナツが眉に皺をよせて聞いてくる

「ああ、あいつ…煙嫌いだから」

「ふうん」

ナツは不機嫌そうに返事をすると、煙草を口にくわえた

「ホントに、信じられねえくらいの変わりようだな」

木下が大きく頷いて、腕を組んだ