「俺、宇宙人なんだ」


急に晴天の下言われた言葉に、思わず笑った。
宇宙人て。
どうせつまらない冗談にしても、もっと捻って欲しかった。


「何それ、ださ」


同じ笑うでもこれは嘲りに近い。
ついでに吐き出した言葉は、やっぱりそんな意味を含んでいた。
宇宙人て。
もう一度自分の中で繰り返して、鼻で笑った俺がいる。


「嘘だと思ってるんだ?」
「つまんねえ冗談だと思ってるよ」
「疑ってるんだ?」
「つまんねえんだよ」


何故か微妙に食い下がるこいつが、少しだけ気持ち悪い。
が、こいつはいつもこんなだ。
周りからはそれで嫌遠されているし、友達は俺しかいないだろう。
頭の中が電波だ。
そんなこいつを面白いと思える奴はきっと少ない。


「お前ってときどき疲れるよな」
「やっぱり嘘だと思ってる」
「そういうとこが」


ときどき、面白いを越えている。
変わらず嘲りながら、それでも一緒にいてやる俺は優しい。
それをわかっているだろうか。
わからないなら、それこそこいつは、一回死んだ方がいいかもしれない。


「いいんだ」
「あ?」


小さく小さく呟かれた言葉が、俺には聞こえなかった。
付き合いきれないと呆れていたから、届かなかったのかもしれない。


「友達だから」


今度は聞こえた言葉。
と、するりと手袋を外して掲げられた指先。


「……は、」
「俺、宇宙人なんだ」


晴天に掲げられたそれは、青く青く、晴天と同化していた。
うねうねと、どす黒くうねる何かが、まるで流れる血液のようにそこに浮き出ていて、


「君を連れていってあげようか?」


『友達だから』

そう笑ったこいつの指が、真っ直ぐに、俺を指していた。
小さく息を呑んだ俺が、笑えなかったのは言うまでもない。



6,青い指【エンド】