ああこんなものかななんて、易々と納得しているわたしもどうかしているけれど、ふわふわと漂う君も大概どうかしているからお互い様かもしれない。
世の中は広くて狭いと思えば、見えているだけが全てという訳でもないことも、何となく納得出来る気がした。
「どうしたいの?」
聞いたところで応える気のない君は、やっぱりふわふわと宙を漂う。
「何がしたいの?」
まだ的を射ていない遠回しな質問に、目の前でゆらゆら揺れる髪。
ああ真っ黒、ああ真っ赤。
わたしが憎いだろう君は、いつもわたしにつきまとう。
発狂するのを待っているのか、はたまた、身を投げるのを待っているのか。
「因縁てやつかしら。巡り巡ってっていう」
「だってそうでしょう?」
「本当は知っているの」
「そうよ、知っている。わかっているわ」
矢継ぎ早に一人でまくし立てて、もしかしたらもう発狂に近いのかもしれないとぼんやり思った。
「……いいわ、あなたに応えてあげる」
そう言えば、はじめて君が笑った。
ふわふわと漂う君。
首から下のない君は、いつかわたしが殺した君。
真っ黒で真っ赤で、あまりにいつもつきまとうから、もうこわいとも思わない。
「──そうね、巡り巡ってくるのよね」
そうだと言わんばかりにつり上がった口元を見留めて、わたしの視界は暗転した。
それで、おしまい。
50,それでおしまい【エンド】