彼女の目の下には、隈が出来ていた。
「あたし死んじゃうんだわ」
思い出したかの様にそう言った彼女は、どこか虚ろに遠くを見ていた。
「何で?」
「妄想という名の睡眠不足よ」
尚も遠くを眺めるそれは、もはや焦点を結んでいない様にも思えた。
「妄想で?」
妄想で眠れないということだろうか。
どうも理解に苦しむ。
「馬鹿げた話だと思うんでしょう」
口角を僅かつり上げ、視線はそのままに彼女は笑った。
それは不敵に笑ったのだ。
「馬鹿げてるかもしれないけれど、眠れないのよ」
その数日後、彼女は死んだ。
遺体の隈はもう窪みの様だったという。
妄想という名の睡眠不足は、妄執というに相応しかったのかもしれない。
そして今、僕も眠れない。
33,妄執うさぎ【エンド】