豪雨だった。
風は吹き荒れ、割れた窓からは容赦なく雨が部屋を侵していた。
引き裂かれた安っぽいカーテンと、そこに飛び散り滲んだ血痕。
悲鳴によって集まってきた面々は、言葉なく顔面蒼白だ。
それもその筈、この辺境の小さなモーテルの一室。
ここで、僕達の目の前で、さっきまでしけた煙草をふかして罵詈雑言を吐いていた売女が、腹を引き裂かれて死んでいた。


「な、何で……」


隣にいた金髪の強面バイカーが、青い唇を震わせて呟いた。
気持ちはわかる、だって僕達は、ただこのモーテルに豪雨によって足止めを食らっただけだ。
この売女だけが死んだなら、そう大したことではないかもしれない。
そう思うこと自体すでに何かが麻痺しているのかもしれないが、これで二人目だと考えたなら、それも仕方ないことだった。


「何で……何でだよ!?随分ふざけた三文映画じゃねえか!ふざけんな!」
「うるさいわね!」
「てめえこそ黙れよ年増女が!」
「何ですって!?」


売り言葉に買い言葉か。
バイカーに食って掛かった女は、艶のなくなったブルネットの髪をぐしゃぐしゃにして、ぎゃあぎゃあと喚き散らした。