「よーい、はいっ」
何本も何本もプールを行ったり来たりする。
でも、私は水が応援してくれているようで、泳ぐ私を水が押してくれたり、行く手を開け
てくれたりしているかのように気持ちよく泳ぐことができた。
練習も終わりかけの夕方になり先生が言った。
「どうした、悠里。今日はえらくいいフォームだな。余分な力が入ってないぞ。タイム測るってみるか」
『はいっ』
いつもなら緊張してしまう私なのになんだかとても落ち着いた気持ちでいられる。
ふと、慶太先輩の姿が目に入った。
先輩は私に頷きながら胸を拳でたたくポーズをしてくれるのが見えた。
スタート台に上がる。ゴーグルからは優しく水が迎え入れてくれるように見えた。
「よーい」