目を閉じてメロディーに身を任せる。

部屋に戻ってから何度目かわからないぐらい、ずっとこうしている。



美しい旋律の、静かなバラード。

最初から、思うイメージはひとつだった。



これは、冬の夜空だ。

冷たく澄みわたる、しんとした空気。
小さな音が響く、静かな夜道。
そして、空には星が輝いている。



このメロディーを聴くと、彼を想わずにいられない。


冬の夜空のような瞳の、彼を。



――約束。



彼の声が、今もはっきりとこの耳に残っている。



いつか、一人で立てるようになったら。



細いチェーンの先の、小さな星を握りしめる。




そんなこと、本当にできるのだろうか。
今でさえ、彼を想っているというのに。なのに武弘にもはっきりした態度が取れず、祐夏にも曖昧な態度でいる。


これのどこが、優しい人間なんだか。

自分にはほとほと嫌気がさすばかりだ。



白い紙に向かって、
ペンを走らせる。



今はこのメロディーだけに身をまかせながら。