「雪音、お昼食べよ!」



祐夏が私の前に腰を下ろす。


普段以上に元気な祐夏を見ていると、ホッとするどころか逆に心配になる。



武弘が、何か言ったりしたのだろうか?
いずれにしても、自分の気持ちがお構いなしに繰り広げられていることに苛立ちが増す。


あぁでも何だってこう後ろめたく思ってしまうんだろう。武弘の強い眼差しに、どこかで惹かれている自覚があるからかもしれないし、こないだのキスのせいかもしれない。



いずれにしても、祐夏は大切な友達だ。祐夏の彼氏を奪うつもりなど毛頭ない。


でも自分が原因(かもしれない)である以上、何があったのかなんて聞くことはできない。
かと言って、あのキスのことを話すこともできない。

自分が傷付きたくないだけのくせに。
いつからこんなに汚い人間になってしまったんだろう。




「雪音、次は音楽だよ。早く行こ」




にこにこと笑いかける祐夏にうん、と返して立ち上がる。