混乱したまま、教室を出る。



今日は祐夏が学校を休んだ。メールには、『風邪だから』と入っていた。

少し、ホッとする自分に嫌気がさす。



そういえば、今日は敬太もいない。
いつものサボりだろうか?



とにかくどうにかしなければ、と重い足取りでスタジオに向かう。





「よぉ、来たな。」



スタジオの扉をあけると、武弘がいつもと変わらない表情で、私に言った。



あ、なんだ。夢だったのかな、あれも。

と、考えた時に、



「謝らないからな、昨日のこと。」



と、武弘がこっちの希望を一瞬にして崩壊させた。




「何なの?どういうこと?」



現実であることを観念して問いかける。




「だから、昨日言ったろ。」


「あれが理由になるわけないでしょ」



「あれ以外ねぇんだよ。祐夏は確かに俺の彼女だ。でもお前に惹かれちまったのはもうどうしようもねぇんだよ」



バカが、と捲し立てるように言われて、一瞬呆気に取られた。




「わかってるよ、お前の気持ちなんてのは。俺には絶対なびかない。他の奴がそこにいんだからな。」

そこ、と私の喉元に指をさす。



「でも、俺はそんなに諦めのいい性格じゃねぇんだ。祐夏のことはちゃんとする。いつか絶対お前を手に入れてやんよ。」




そこまで言うと、にやりといつものように笑って、ギターを弾く。




わけがわからない。
でも、かろうじて言ってやった。



「私は絶対なびかないわよ!」



彼はまたしても、にやりといつものように笑った。