「終わりだ」

その時、アラームが基地内に鳴り響く。

同時に何かに足を掬われて、何故か動いているティアの背中にうつ伏せに覆いかぶさる。

そして、そのまま、後ろにいるテンプルナイツの上司とは逆方向に走っていく。

「ティア!」

ティアが自分の体に能力を麻痺させる能力を当てたか。

二足歩行で前足の蹄を自分の身体に当てているのなら、可能だ。

しかし、アラームが鳴るなんて、誰かが基地内に侵入したとでもいうのか。

「ティア姉ちゃん!前から、いっぱい人がくるよー!」

俺と同じく背中に乗せられているチェリーが敵を感知する。

逃げ道は限られていた。

二つ在る内の一つ、ティアは地下へと逃げ込む。

階段を駆け下りていき、新たなる世界に足を踏み入れる。

階下は左右に分かれており、右に進んでいく。

地下の道を進むにつれて、俺の指と腕が自由を取り戻した。

俺はティアの背中から飛び降りる。

「まったく、とんでもねえ野郎だ!」

効果範囲はあるだろうが、効果が切れた位置からすればそこそこ離れなければならない。

「お兄ちゃん」

ティアの上で座りながら、チェリーが真剣な眼差しで見ている。

「あの人が、みんなを、どうにかしてしまったの?」

「チェリー」

俺は何と答えればいいかわからず、詰まってしまった。

「もし、そうだったら、あの人の事、どうにかしてやりたい」

チェリーの一言により、自然と足が止まってしまう。