どうする、どうすればいい。

首が動かないのでティア達がいる隣の様子もよく解らない。

目は動くが、見える範囲にも限界がある。

「アンタは、何で妖魔を目の仇にしているんだ?妖魔がアンタに何かしたのかよ?」

「世界に住む人間の救済、今、必要なのはそこにある」

「救済?」

何もしてない人や妖魔が死ぬというのに、救われるとでもいうのか。

「妖魔は人間を滅ぼそうとしている。手を取り合えない程に深刻化しており、人間を救えるのは人間だけだ」

「話し合いをすればいいだろう」

「必要はない」

「何?」

「交渉は決裂する」

「やる前から、何を言ってんだ!?」

「絶対的な思想が在る限り、書類に判を押す事はないだろう」

「戦争は無関係な人間も妖魔も死ぬ。アンタ等の身勝手なエゴが、皆を不幸にする」

誰だって戦争なんかしたくはないし、巻き込まれたくもない。

だったら、違う手段を用いればいいだけの話だ。

「我々には力がある。人々を守る義務もある。一方的な虐殺が始まった時、出遅れた我々は多くの犠牲を払う事になる。お前は殺された人に対してどう責任を取る?」

「アンタは矛盾してる!戦争すりゃ犠牲は出るだろうが!だからこそ、話し合いの場を設ける努力しろって」

虐殺した妖魔達については、何とも思わないのかよ。

これじゃ、取り返しがつかない事態になってしまう。

同盟を組んでいる退魔師達ならば、何とか説得出きる可能性はあるはずだが。

「もう遅い。火種はすでに巻かれた」

村の妖魔を殺したという事実か。

難しいが、最初に改革派に理解を促すしかないのか。

「お兄ちゃん、別の人達がいっぱい近づいてる」

「くそ」

このままでは、何もしないまま俺達も死んでしまう。