「くそ」

声は出るようだが、他の身体の細胞は死んだようにビクともしない。

これは、能力なのか。

「貴様達に生きる希望はない」

低音を極めたような男の声が背中から聞こえてくる。

早く逃げなければ、三人とも殺されてしまう。

しかし、近づいてきていた足音は止まっている。

「諦めは肝心だ」

俺が今出来る事は会話くらいだ。

「ふざけんじゃねえ。俺は、こいつらと逃げるんだ」

「何も出来ないでいる貴様達が、逃げられると思うか?」

後ろの男の言うとおりだ。

今、もし別の奴らが表れでもしたら、俺達は一貫の終わりである。

「無駄だ。すでに兵士が向っている」

増援を待っていると言う事は、男自身は追ってこないのか?

いや、追って来られないのかもしれない。

もしかすると、俺達と男は対等な状況であるという事なのだろうか。

そう、最初に後ろの男はルールと言った。

男自身も、ルールに従っているといってもいいだろう。

「あんた、俺達が一階に来るのが解っていたかのような行動じゃねえか」

「基地内は監視されている。解らないほうがおかしいだろう」

やはり、監視カメラは存在していた。

しかし、今となっては心配しても遅い。

「兵士がいりゃもっと早かったのに、あんた、案外バカなのか?」

「部下が働いているのなら、上司である私も働かなければならないだろう」

後ろにいる奴は、テンプルナイツで地位の高い人物らしい。

「貴様の能力は見させてもらった。無駄に兵を近づけさせて、減らす必要はない」

だから、指揮官の自分が来たとでもいうのか。

「あんた、能力を使えるようだが、妖魔なのか?」

「答える必要も、断じてない」