「ねぇ大志、母さん思うんだけど」

「何」

「弟や妹ができることはあっても、世の中でお兄ちゃんやお姉ちゃんを欲しいなーって思っている人の大半は、それを叶えることはできないのよ」

「はぁ」

「だからね大志、あんたはラッキーなのよ」

母は得意げにフフンと笑ってみせた。香水の甘ったるい匂いが漂ってきて、僕は顔をしかめる。

「だからさ、そもそもお姉さんなんか、」

僕がそう言いかけたとき、母は立ち上がって、入口に向かって軽く手を挙げた。