麻生という奇妙な女子生徒のせいなのか、僕はその日、由紀の夢を見た。
昔現実にあったことを夢に見るのは初めてのことではない。特に由紀との生活が幕を閉じたときのことは、何度も何度も夢に見たことがある。
あのとき僕らは海にいた。
夜の海は真っ暗で、どこまでが海なのかもわからない。
由紀は僕の手を握っていた。冷たい手は震え続けていて、僕は必死で握り返す。
でも僕の手が何も掴めてはいないことを、夢の中の僕も、あのときの僕も、ちゃんとわかっていた。
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