僕の微妙な答えを聞いて、麻生は追及するどころか、つまらなそうに伸びをした。

「なぁんだ。やっぱり」

「何なんだ、麻生。変なやつ」

「先生はお姉さんのことを女の人として好きだったんですよね」

麻生の声がひんやりした温度で耳にへばり付く。

僕はぎょっとして彼女の顔を見た。

「何言ってんの、お前」

すると麻生は、初めてにっこり笑った。

「知ってますよ、芹澤先生のことならなんでも」

お先に失礼しまーすと、彼女の軽やかな声だけが準備室に残る。

僕はあほみたいに口を開けたまま、麻生のいなくなった準備室に立ち尽くしていた。