「何だ、帰らないのか?」

観察されているようで、あまりいい気はしない。さりげなく帰るように促すと、麻生は肩をすくめた。

「先生、ひとりっこですか?」

「は?」

「ひとりっこ」

「あぁ……うーん、まぁ、今は」

突然の質問に戸惑いつつ、僕は正確な返事を探した。
母と芹澤さんが結婚して、僕には由紀という姉ができたことはある。
ただ彼らが離婚して何年も経つ今でも、由紀を姉だと言えるかは微妙なところだ。

それに由紀は、姉であって姉でなかった。