「生物の先生なのに、何もご存知ないんですね」

「いや、まぁ……ごめん」

「特にこれといった活動はしていませんが」

麻生は窓際に置かれた水槽を指差した。

「あそこにいるカエルに、餌をやります」

「は?カエル?」

僕の声に答えるかのように、水槽の中のカエルは強く水面を打った。

「他にもイモリとか、植物とか。生物の授業で使うものは、うちの部が世話してます」

「そうなんだ……知らなかった。佐伯先生がやっているものとばかり」

佐伯先生というのは、僕の先輩の教師だ。
同じく生物を担当していたが、今年の春定年退職されてしまった。