五月の終わりが直ぐそこまで来ていても、夜はまだ少し冷えた。


特に薄暗い蔵の中ともなれば、底冷えが酷く、寒がりな矢央は少しでも寒さから逃れるため身を丸め隅にうずくまっていた。



『間島矢央、処分を言い渡す。 お前は俺が良しと言うまで、蔵で待機だ』


最初は意味が分からなかった。
蔵で待機するのが処分(?)なのかと、ポカンとする矢央の隣では永倉は深い息を吐き


仕方ないか、といった諦めたような表情を見せていた。


『暫く堪えろ。 死ぬよか増しだ』


永倉にそう言われても、やはりよく分からなかった。

ただ待機するだけなのに、どうしてそんな悲劇的な表情をされるのかと。


だが今になれば、全ての意味が理解できた。


広く暗い蔵の中、寒さをしのぐための物すら与えられず、唯一の出入り口はしっかりと閉ざされ、遥かに高い場所にある小窓からは月明かりと冷風しか入ってこない。


飲み水のみ与えられ食事は出されず、飢えと寒さに堪えること一日が経過していた。


死ぬより増しかもしれないが、まだ十六の少女にとっては過酷な処罰になった。


唯一ある小窓から入る明かりだけで、およその時間の経過は分かるが、多分それも正気が保たれている間だけだと思われた。

暗く寒く、孤独な環境下で、あとどのくらい堪えれば外に出してもらえるのだろうか。


「はあぁぁ。 さむっ……」


凍える手を摺り合わせ、暖かい息を吹きかける。


ぐぅぅ、とお腹も鳴る。


寂しくて、ひもじい。


「早く……出してくれないかな…」


そう願うしか、今の矢央には為すすべがないのだった。


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