やり直したい。

もう一度、皆の信頼を取り戻したい。


僅かに濡れた瞳は、そう必死に伝えていた。


「話を割ってすまねぇが。 処分を決める前に一つだけ聞いてほしいことがある」


梅雨間近の生温い風が髪を靡かせる。


土方の鋭い眼はそのままに、永倉を捉えた。


「こいつは確かに迷ってた。 俺らにつくか、奴らにつくか。
だが、最後までこいつの心は新選組にあったんだと俺はこいつにあった時確信した。
俺や総司、山崎や斎藤に会った時のこいつの目は、帰りてぇけど帰り方がわからねぇ、まるで迷子になってるかのような目をしてたんだ。
いつだって、こいつの心にあったのは新選組。 だが、迷いを生み出させていたのも間違いなく新選組だ」


「………」


「長州の動向を探るうちに、そろそろ俺らにとってもこいつにとっても決断の時が来た時、土方さんには悪いと思ったが、山崎に極秘に動いてもらった」


落ち着かない空間で、矢央は唯一頼れる存在が側にいたことに、ホッと息を吐いていた。


これで矢央が救われるという保証などないが、それでも一人じゃないことに勇気がでるのであった。


「こいつに選択を迫った。 新選組に帰りたいのなら、そのまま長州の動向を探れと。
そして、矢央が選んだのは……」

「なるほど。 山崎が池田屋に多数の浪士が集まっていると報告をくれたのは、矢央の手柄なわけか」

「そう言うことだ。 処分を決めるなら、それを踏まえてにしてやってほしい」



土方も頭が良い。
矢央が危険を冒していたことも、手柄がどれほどの価値があるかも分かった。


そして、数分の沈黙の後、土方が出した処分は―――――


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