重い沈黙。 土方の双眸は鋭く矢央を射抜く。


「今更、よく顔を出せたもんだな」

「……っっ!」


その声は冷たく矢央の胸をわし掴む。

永倉達のように容易く受け入れてくれるはずのない相手だ。

言葉を選び何かを口にしようとするが、焦りのためやたら口の中が乾いて仕方ない。


永倉も助けてやりたいが、この場は甘やかすわけにはいかないのである。


矢央が向き合わなくてはならないのだから。


「お前は今まで、坂本龍馬と共にしていたと報告を受けている。 長州の奴らとも関わりがあったと聞くが……」


静かに話す声の奥には幾つもの不信感が感じられた。


「まさか自ら死に来るとはな」


ビクッと、衝撃が走った。


やはり、土方は受け入れてはくれないのかもしれない。

世の中そんな甘い話しはないというのだろうか。


「新選組を…抜け出したのは、本当に…すみませんでしたっ」

「謝れば、脱走の罪が免れると? ンな甘めぇ話しはねぇよな」

「…っ分かってます。 だから、どんな罰でも受ける覚悟で帰って…きました」


ほお、と僅かにだが土方の表情が変わる。


此処で泣いて騒ぐものなら、矢央はそれまでの覚悟しかなかったのだろうと判断したが、

暫く見ない間に、意志の強い瞳を見せるようになったかと少なからず関心をよせる。


「新選組を逃げ出したこと、本当はずっと後悔してました。 行く宛のない私の面倒を見てくれた恩を返さないで、迷惑ばかりかけて……。
謝って済むなんて思わない。 だからっ、どんな罰でも受けますから、もう一度私を此処に置いて下さい!!」

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