赤く染まりだした町並み。 目の前を穏やかに流れる川には夕日が写り込む。


このまま時が止まればいい。と藤堂は切に思う。


「そろそろ帰ろうか。 もう夕餉が始まってるよ」


膝に手を当て体を起こすと、腰に下げている大小の刀を揺すった。


「矢央ちゃん……」

「はい?」


隣を歩く藤堂は、少し先を見つめている。

その顔は夕日に染められていた。


「これからも、矢央ちゃんは辛い思いをすると思うんだ。
新選組という隊名を容保様から頂いたということは、僕達は更に修羅の道を歩むことになるだろう」


サッサッサッと砂地を歩くと、それに合わせ背後に伸びた影も動く。


「いつ誰が死ぬか分からない暮らしはこれからも続く」


サッサッ…と、音が止む。


藤堂は立ち止まり、後ろから矢央を見つめ、その瞳は切なさを漂わせていた。


「矢央ちゃんには、生き抜いてほしい」

「と…平助さん?」


藤堂が近付くにつれ、矢央の視線は上がり、見上げることが困難になるころには、藤堂の腕の中にいることに気がついた。

まだ少年らしさも僅かに残す細く、しかし毎日の鍛錬で鍛え抜かれた胸元にドキンッと胸が高鳴った。


「あ、あの……」

「いつか矢央ちゃんを必ず守るって言ったよね。 あの気持ちに変わりはない。
生きている限り、絶対に守るよ……だから」


少し体を離し、夕日のせいか藤堂のせいか分からないが赤く染まった矢央の顔を見下ろした。

ドキドキと煩いのは、矢央だけではなく藤堂も同じ。


「す―――…」


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