白布に金で刺繍されたそれは巾着袋だった。


「結構前に買ってたんだけど、渡す機会なくて……。 無くしたら大変だろ? だから…」


何故か頬を赤らめる藤堂を不思議に思ったが、矢央は笑顔で巾着袋を受け取った。


「藤堂さん、ありがとうございます!」

「うっ…うん」


更に顔を赤く染め、前髪を意味なく弄る藤堂だった。


また暫く歩き、二人は土手に座り込んだ。


「日が傾くのが早くなったよなぁ。 もう秋かぁ…」

「そうですね。 私が来たのが春だったから、本当に早かった」

ソワソワと吹く風に、矢央の黄金色の髪が靡く。

風に揺すられ緩んだ結い紐、髪が抜け出し遊んでいる。


「あ〜あ、私髪多いから紐直ぐに緩んじゃう…」

「貸してみ」


解いた結い紐を受け取った藤堂は、矢央に背を向けるように指示を出すと、量は多いがサラッとした細い髪を束にして持ち上げた。


それを結んでいくと「出来上がり」と、矢央の肩を軽く叩いた。


「ありがとうございます! 藤堂さん!」


自分でするより綺麗に纏められていて、こんな些細なことにでも嬉しくなる矢央。

そんな矢央を愛しく思う藤堂。


「ねぇ…矢央ちゃん。そろそろ、その藤堂って呼び方止めない?」


「え? でも……なんて呼べば?」


「平助。 僕達、一番年近いし、もっと気楽にいこうよ、な?」

「……平助、さん」


名前を呼ぶと、ほわっと心に温もりが広がっていった。

更に距離が近くなったと、矢央は嬉しくなった。


「平助さん!」

「ん。なに?」

「ううんっ。 呼んでみただけです!」


エヘヘと肩をすくめて照れ笑いをする矢央。


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