「そぉいえば、あれどうしてんの?」
「あれって?」
川沿いを二人肩を並べて歩いていたら、突然藤堂は言った。
「ほら…その、あの赤い石だよ」
言いにくそうに、鼻の天辺を擦る藤堂。
矢央は「ああ」と立ち止まった。
立ち止まった矢央を振り返り藤堂は首を傾げている。
ゴソゴソと着物の合わせに手を突っ込む矢央を見て、焦りだした藤堂はキョロキョロと周りを見ている。
「や、矢央ちゃんっ。 こんな人がいるとこで……」
「これのことですよね?」
「え……」
懐から出したのは裸のままの赤い石だった。
それを片手に出し、前合わせを直している矢央は愕然としている藤堂を「どうしたんです?」と見上げた。
「一応肌身はなさず持ち歩いてます。 これは私にとって、切っても切れない物なんで」
「今もいるのかな……お華ちゃん」
藤堂もあの晩の事を暗殺の件には触れないままに聞かされた。
お華が矢央の体を乗っ取ったと、永倉からは実際にお華を見たとまで聞いている。
「多分……。どうなってるのか、未だによくわからないけど」
「う〜ん。 でもこれって、きっと矢央ちゃんには大事な物には違いないよね?」
「そうですね。 これを見つけて、私はこの時代にやって来たから」
「だったら……はい、これあげる」
藤堂は袖を漁り何かを出した。
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