芹沢が別れを言いに来てくれたのは、矢央にだけだった。

あれは幽霊というやつだろうか、と矢央は思った。


不思議な事だが、矢央は驚かなかった。


お華さんだって、そういった類だしねぇ。


この時代に招かれて早七ヶ月、不思議な事に幾度となく遭遇している矢央にとっては、芹沢が会いに来てくれたことは逆に喜ばしいことだった。


「さぁてと、矢央ちゃん。 ついでに散歩して帰ろうか」

「はい」


蟠っていた心の棘が、スーッと晴れた。


先を行く藤堂を追いかけながら、秋の風吹く壬生寺を振り返った。


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